森でマッサージ - Ki のはなし –

 

 

わたしたちは田舎に住んでいてね 

森の中なの

友人があそびに来てくれたら

「ちょっとマッサージやってく?」 

と気軽にさそうのよ

 

 

 

2007年5月

これから東京でスウェディッシュマッサージのお店をはじめるという日本人の娘に

スウェーデン人の Ki 先生はそんなことを仰った

 

マッサージといえば疲れたひとが疲れた時間にうける

おしごとの休みの日に 仕事をもっとできるようにうける

そんなものだと思っていたのです

 

はじまりを手伝ってくれた38才の柴田さんはリフレクソロジーもスウェディッシュマッサージも

身体がよく動くようになった、生理が変わった、むくみが全然違う、と感動していたけど

わたしはアロマや指圧のように怠くならないからとてもいいな、とは感じていたものの

いつかわたしも柴田さんみたいに 効いたなぁすごいなぁと感動するような時が来るんだろか?と

そんなふうに思っていて

まだ24歳の娘は疲れしらずに休まず無限に身体がうごいていたのでした

 

都会の中で都会の人を次々と施術する日々

よろこんでもらえてうれしいと思いつつ 新宿駅徒歩3分の綺麗なビルにいると

Ki が話してくれたあの景色はここにはないものだ と

その世界が不思議でならなくて

たまにあの話を思い出しては心のはしっこにおいておきました

 

 

 

 

いい物件をみつけた と友人からメッセージが届く

平面図を見たところマッサージにぴったりの広さで水周りもきちんとありどんつき物件(その物件の先に道がない)とのこと

家賃は1万円ちょっと

 

「田舎に越して来たばかりのよそ者がコロナ渦で家に施術に呼ぶのは迷惑だろうか」

と悩んでいた時だったので物件を見に行き

森を歩くと Ki を思いだしていました

 

一緒に物件を見に行った友人がうれしそうに山菜をとっていて

ここなら草刈りの音なんて皆無だし住んでいる家よりもさらに静かで

森なら夏も涼しいから施術にいいところだなと思いました

壁など直して良いそうで 壁に穴を開けて薪ストーブと窓をつくることも許可がでて

まもなく借りることにしました

 

朝起きたら朝ごはんとコーヒーをもって森で食べてから作業

薪ストーブと窓をとりつけ 虫が入らないように網戸をつくる

コンパネむき出しの壁に漆喰をぬり 畳をもらってきて敷いて すき間をコメリのカフェ板で埋める

トイレを飾り花をおくと人間を感じられ

拾ったと思っていたゴミはまだ出てきて拾い上げ燃やす

ゴミ置場になっていた木の根元がスッキリすると新しい空気が通っていく

だんだんと森の気配というものに馴染んでいきました

 

 

 

わたしの育ったところは田舎ではあるけど住宅地で自然の中という感覚がなく

親もキャンプはしないし プールでは自由に泳げるけど海はクラゲもいるし

森も海も慣れておらず怖いものと感じていました

 

なんだけども

 

この自然界へ足を運べば運ぶほど健やかであることに気づき

鳥とうたうことが人間界よりも楽しいし

虫の羽音の細かなちがいもおもしろかった

季節で光がまるで変わり 晴れの日も雨の日もそれぞれの美しさがあり

たくさんたくさん生きるものを感じられ

いつかニセコで感じた「生きている」感覚が現れてきました

 

デッキにベッドを広げてマッサージをしたときの木々のいろ

しゃらしゃらの風とコポコポと流れる小川の音 花の香り

虫も鳥もあちこち飛び回り 天国だ天国だと

包まれてうとうとする

 

小屋の中でのマッサージはまた別世界で

小川の光と音の揺れを見て感じながらその波のままふれている身体に振動させること

通る風の心地よさと薪ストーブの温かさの安心の中

静かに安らかにすとーーーんと自分の中へ落ちる

 

どちらもこれまでいろんなところで施術した中で

比べものにならないほど心地よい空間でした

 

これまで「最高に心地よいところでマッサージをしよう」と

究極のようなものを探してきたんだと思います

 

 

わたしたちが表現するもの 生死に包まれ生まれなおす

ということに出会いました

 

 

 

あのときの Ki のはなしを聞かなかったら

気に留めていなければこの森で施術することにはならなかったんだな

それと同時に彼女たちはこんな世界で施術をしていたのかと

ほんの少しわかったような気がしてうれしかったです

15年をかけてそのための感覚を鍛え 点と点がつながってくるなんて人生っておもしろいものなんですね

いま私たちは「気軽にマッサージする」ことをとても大切にしています

 

 

あふれる生き物の目をたくさん感じて 怖くなった

怖くみえたのは ただそこに居るものたちのいのち

それがこの森のいちばんの良さ

 

わたしたちの施術は4つの手だけではなくて

森の生きものと共に施術ができると思えていること 受けていただけること

この上なく幸せなことです

 

 

ここでの施術をわたしたちの作品としてお届けします

ぜひ体験しにいらしてくださいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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